美しい日本語

 美しい日本語とは何だろうか。それはどのようにすれば身につくのだろうか。

 文学をずっと研究してきた。主に規範を学ぶこと——考えることが私の研究分野だが、そこに美しい日本語を読み書きすることは必ずしも求められていない。伝わる文章を書けば良い。それが研究における文章作法だ。理系、文系問わず、美しいことよりも、伝わることの方が大切だ。

 しかし美しい日本語というのは存在する、はずだ。美しい英語やフランス語、それに漢文が存在するということを私たちは知っている。それは韻律が調えられ、同じことばが同じ段落に現れるのを避ける傾向があるといった共通の名文から、複文を好むフランス語、字数を合わせる漢文といったようなその言語に特徴的な美しさというものがある。

 では果たして、日本語にそのような規範的な良い文章というものがあるのだろうか。諸外国語でとり入れられている文章作法を日本語にそのまま適用させて良いのだろうか。